日経オンラインキーパーソンに聞く
人口減少に伴う市場成熟が着々と進行する中、競争が激化する一方のサービス業。価格競争力のある大手が勢力を拡大する半面、昔がらの個人店の多くは業種を問わず苦戦を続けているのが実情だ。
そんな中、周囲から見ると「採算度外視」としか思えない親身のサービスで、生き残りを図ろうとしている小さなクリーニング店が東京都品川区にある。運営会社キャンディクリーナースの野中光一専務に話を聞いた。
(聞き手は鈴木信行氏)
まずは会社概要から教えてください。
野中:昭和40年代に父が中延に創業したクリーニング店が前身で、現在はクリンハウスという屋号で西大井と武蔵小山に2店舗を経営している。物心付いたころから父がアイロン掛けをする背中を見ながら育ち、25歳の頃から仕事を手伝うようになった。今日はこんな小さな店に一体何の用でしょう。
「品川に驚くほど仕事が丁寧なクリーニング店がある」との情報をつかみ、その秘密を探りたいとお時間を頂きました。
野中:そうかなあ(笑)。至って普通のクリーニング店だと思うけど。
そう思うのは専務だけで、御社は顧客にとって極めて画期的なサービスを展開しています。ズバリ「洗濯し終わった洋服を、紙のタグを付けずに顧客に戻すこと」です。
野中:紙のタグが付いていたら、着る前にいちいち外すのが面倒でしょう。
タグを外すのに必要な時間は、冷静に考えたらせいぜい十数秒。
でも外すのは大抵、忙しい朝だけに、なかなか取れなくてイライラしている
人はとても多いはず。
野中:それに、ホチキスでお客さんが指を怪我するんじゃないかと心配で。
ほんとそうです。焦って外そうとすればするほど指に刺さる。
また、うっかりタグを付けたまま出勤して恥をかいた人も相当いると思う。
大手クリーニング業者はこの10年あまり、低価格化から当日戻しまで様々なサービスを打ち出しているが、「そんなこをこうにかしてくれ」という消費者は、今度こそ圧倒的多数派に違いありません。
野中:それはどうか分からないけど、ウチが洋服をお戻しする際にタグを付けない
のは事実ですよ。
そこが不思議で任方がない。業界関係者に聞くと、あのタグは、洗濯した洋服を顧客に返す時に商品を照合したり、工場での商品管理を円滑にしたりする上で必要不可欠なアイテムとのこと。
「タグがないと、どれが誰の洗濯物か分からなくて商売にならない」と言う人もいる。そんな状況で、なぜ御社だけが「タグなし」でクリーニング業を成立させているのか、その秘密を知りたいんです。
野中:まあ、せっかく来たんだから、工場を見学していってよ。
なるほど!「その答は工場のラインに隠されている」と言うわけですね。
では、遠慮なくお邪魔します。